風のたより

まいけるのつれづれ〜読書日記を中心に

エミリの小さな包丁/森沢明夫

傷ついたエミリと静かに受け入れるおじいちゃん。
「自分の存在価値と、自分の人生の価値は、他人に判断させちゃだめだよ」
おじいちゃんの言葉はきっと彼女の芯をあたためる続けるだろう。

おじいちゃんと台所に立つエミリ。二人の距離がいつの間にか小さくなっていくのがわかる。
おじいちゃんの魚料理のひとつひとつが、彼女の「うら」を凛、凛と爽やかにする。風鈴のように。
終盤、おじいちゃんとエミリが台所に立っている姿を想像するだけでジーンとくる。
おじいちゃんの手紙には森沢明夫さんにまたしてもやられた。反則技だ。こらえきれず雫が頬を伝わる。

森沢明夫さん作品3作目読了。胃袋をつかまれた。いや「うら」をつかまれた。