風のたより

まいけるのつれづれ〜読書日記を中心に

夏美のホタル/森沢明夫

恵三さんのしんみりした身の上話が、夏美さんの声かけでさらに潤んでくる。空気を換えてくれる弾む声と背中をさするあったかい手。
夏美さんはとっても魅力的だ。やや内気なしんごくんも。
田舎の風景は私の子どもの頃のまま。夏は、公民館で柔道を習った帰りにふわりと浮かぶホタル。冬は、星空を見上げ、学校で学んだ北斗七星やカシオペア座をさがしながら帰った。
森沢明夫さんの描く自然描写はさりげなく美しい。風鈴の音、葉ずれの音、線香花火、ヒグラシの声。そして異質物みたいな雲月さんの角もとれていく。

才能とは覚悟

人と人のつながりが
人と人の絆が信じたくなる
そんな作品だった。
爽やかな清涼剤であり、掘り炬燵みたいな作品。
作者にありがとうと伝えたい。