風のたより

まいけるのつれづれ〜読書日記を中心に

エミリの小さな包丁/森沢明夫

傷ついたエミリと静かに受け入れるおじいちゃん。
「自分の存在価値と、自分の人生の価値は、他人に判断させちゃだめだよ」
おじいちゃんの言葉はきっと彼女の芯をあたためる続けるだろう。

おじいちゃんと台所に立つエミリ。二人の距離がいつの間にか小さくなっていくのがわかる。
おじいちゃんの魚料理のひとつひとつが、彼女の「うら」を凛、凛と爽やかにする。風鈴のように。
終盤、おじいちゃんとエミリが台所に立っている姿を想像するだけでジーンとくる。
おじいちゃんの手紙には森沢明夫さんにまたしてもやられた。反則技だ。こらえきれず雫が頬を伝わる。

森沢明夫さん作品3作目読了。胃袋をつかまれた。いや「うら」をつかまれた。

家族シアター/辻村深月

「妹という祝福」をNHKFMで朗読を聴いて読みたくなった。
私の娘達も年子の姉妹。
けんかしても何しても妹には姉が
姉には妹が大切なのだ。
結婚式に妹にあてた手紙に!!

「孫と誕生会」
昔気質のおじいちゃんと
繊細が故におじいちゃんに素直に慣れない孫の話。
ホロっとくる。

「1992年の秋空」
学校に封筒を持っていき、学習と科学買っていた頃のわくわく感を思い出す。
二人の姉妹はお互いがもっていないものをもち
そして互いに憧れる
ここでもまた不器用な姉妹が
繋がりを深めていく。

ルポ誰が国語力を殺したか/石井光太

言葉が危ない。想像力が危ない。

私もずっとそう思っていた。

 

家庭環境が国語力に大きな関わりを持つ。

今の教育現場の問題が拍車をかける。

ゆとり教育、総合的な学習が理想の空回りで、国語力の低下をもたらす。

アクティブラーニングを目指す現代。しかし現場ではプログラミング、外国語、ネットリテラシー、キャリア教育と次から次へとおりてきたものに対応するのにアップアップ。それ以前に教員が不足し、教務主任や教頭が担任したり授業をもったりする。国語力どころではない。すべての教科の基礎は国語なのに。

現代の不登校はゲーム依存、スマホ依存と大いに関係している。麻薬、飲酒、ギャンブル依存同様ゲーム依存を問題視する。ゲーム依存治療のプログラムの大変さが心に残る。これは少年院の更生プログラムとも共通点がある。

 

1 子どもを心理的安全性に置く。

2 五感を刺激しながら言葉と思考のリハビリを行う。

3 言葉による成功体験を積み重ね、自己肯定感を高める。

4 実社会での希望や生きがいを見出させる。

 

でも、光明がないわけではない。

五感を働かせる体験から言葉とコミュニケーションを育てることを重視している学校の実践が紹介されている。読書郵便で友達同士で本を紹介し合い、本を読む環境つくりをしている学校。本物の自然、本物の芸術にふれさせることを目指す学校。

五感を刺激されると子どもは言葉を発し、表現力がアップしていく。

 

今、必要なものは

実感をともなう言葉と想像力

そんなことを考えるきっかけになるルポだった。

 

辺境・近境/村上春樹

村上春樹は紀行文でもやはり村上春樹の文体で心を揺さぶる。
阪神大震災の二年後に自分の住んでいた街の辺りを歩いていく。
大震災の傷跡を自らの目で確かめる。小さい頃泳いだ海、空き地が変貌ぶりに違和感を覚えながら。
ノモンハンも同じだ。ノモンハンが事件でなく本物の戦争であることを証明するかのように現地を訪ねる。現地に来て、「220キロを徒歩で行軍する」ことの凄まじさに唖然とする。1時間に6キロの速さで水不足の中の行軍。だんだんイメージ出来てくる。
メキシコでは貧富の差、治安の悪さを実感し、ものを失う喪失感も味わう。
そんな中、香川のディープなうどん巡りと無人島、からす島の秘密は楽しい!

小澤征爾さんと、音楽のについて話をする/村上春樹

小澤征爾さんが亡くなられた時の、村上春樹さんの寄稿文。親友というより家族、いや自分の一部を無くしてしまったような哀しみが伝わってきた。

インタビューと言うより二人のクラシック音楽を仲立ちにした音楽&人生談義である。
村上春樹さんはジャズおたくだと思っていた。それは間違いだった。クラシックを含む音楽おたくだった。おたくは適切ではない。音楽は、村上さんの身体、生活の一部であり、理解も限りなく深い。たぶん、リズムとメロディが染み込んでいるのだろう。
文章を書くうえで、音楽からリズムを学んだという村上さん。そういえば、長編もリズミカルな文章と独特な比喩にひきこまれ、あっという間に最後まで読んでしまっでいる。
小澤さんの演奏に対する感想も、素人のそれではない。系統的に注意深く聴き込み、味わったものの感想だ。村上春樹、恐るべし。
小澤さんに影響を与えた「カラヤン先生」とバーンスタイン。そして齋藤秀雄先生。小澤さんの骨格は齋藤先生からできている。
スイスで若手音楽家セミナーを開き、ロバート・マンさんと指導する章が圧巻だ。
「ネジを締める」という追悼文の言葉も出てきた。小澤さんのマジックと若手音楽家のスパークで、弦楽四重奏が変容していく。そのさまを村上さんが、如実に文章で描いていく。
二人の天才のスパーク、面白い!

平原綾香と開くクラシックの扉/平原綾香

#平原綾香
#クラシック
#読書

平原綾香さんの誘うクラシック名曲とエピソード
⭐︎映画とクラシック
未完成交響楽と未完成交響曲
2楽章で終わった謎が面白い!

⭐︎文学とクラシック
マチネの終わりにのバッハの無伴奏チェロ組曲
確かにギター演奏もいい

⭐︎季節とクラシック
冬 三大アヴェ・マリア
平原さんの推すカッチーニ。沁みる

⭐︎演じられたクラシック
プッチーニ蝶々夫人
浅田真央さんが復帰の時に選んだ曲。
ひたむきな真央さんを思い出し、泣ける

⭐︎思い出のクラシック
ホルストの惑星 木星との出会い
大学一年の一限目の授業で聴いた瞬間
ポロポロ泣いていたそうです。
やはり最終話が一番!
ありがとう平原さん。

辺境・近境/村上春樹

村上春樹は紀行文でもやはり村上春樹の文体で心を揺さぶる。
阪神大震災の二年後に自分の住んでいた街の辺りを歩いていく。
大震災の傷跡を自らの目で確かめる。小さい頃泳いだ海、空き地が変貌ぶりに違和感を覚えながら。
ノモンハンも同じだ。ノモンハンが事件でなく本物の戦争であることを証明するかのように現地を訪ねる。現地に来て、「220キロを徒歩で行軍する」ことの凄まじさに唖然とする。1時間に6キロの速さで水不足の中の行軍。だんだんイメージ出来てくる。
メキシコでは貧富の差、治安の悪さを実感し、ものを失う喪失感も味わう。
そんな中、香川のディープなうどん巡りと無人島、からす島の秘密は楽しい!