風のたより

まいけるのつれづれ〜読書日記を中心に

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド/村上春樹

上巻の倍のスピードで物語が展開していった。
そう感じるのは、私の現実世界と僕の深層世界に完全に入り込んでしまったからなのか。
読んでいると春樹節が時に炸裂する。
ブルックナーのシンフォニーの番号なんて誰にもわからない。」笑
学生時代、ブルックナー好きの友だちの影響で4.7.8.9番ならわかるかも。クナの8番のレコードをプレゼントしてくれた友人も思い出した!感謝。
カラマーゾフの兄弟の名前を全部言える人間がいったい世間に何人いるだろう?」笑
確かに。学生の頃読んだけど、兄弟の名前は忘れてしまった。アリョーシャだけはかすかに覚えていた。
会話の中にクラシックが出ると、すぐに聴きたくなって、ブランデンブルクピノックで、カザルスで、そしてリヒターで聞きながら、クライマックスを迎えた。極め付けは、「ダニー・ボーイ」を。
「世界には涙を流すことのできない哀しみというのが存在するのだ。」
この言葉が強烈に刺さり、やがて静かに沈んでいく。
読み終わった後、小さい頃過ごした家の裏山、野球をした田んぼ、通った畦道、そんな故郷が浮かんだ。今を支える何気ない日常と、その日常を作ってくれる家族や大切な人の心を思い、あたたかくなった。
永遠よりも厳しくても理不尽でも現実世界で生きてみようか。